卓球部 選抜予選を振り返って

「来年は借りを返す」昨年の帰路そう誓ってからあっという間の1年間だった。
 結果は第5位。なんとか第50回春の全国高校選抜卓球大会の出場権を得ることができた。ホッとしたのが今の正直な気持ちだ。この1年綿密に練習計画を立てては立ち止まり、また練り直しての試行錯誤を幾度となく繰り返した。お世辞にも器用とは言えない選手たちなので思うように伸びて来てくれず思い悩んだ日も多かった。中学校から卓球を始めた生徒が多いうえに、もともとの実力も経験も乏しいのがこの集団の特徴である。「もしかしたら、代表になれるかも」と初めて手ごたえを掴んだのは大会直前12月11日の仮想ゲームの最中、ちょうど大会5日前のことである。
 監督とはまるでオーケストラの指揮者のようなもの。選手それぞれの様々な個性・特徴・性格をしっかりと把握し、上手にコミュニケーションを図りながらひとつのチームとして完成させることが仕事である。さらに選手の抱く不安を取り除くことも重要な役目となる。しかし何年キャリアを重ねてもそれが本当に難しい作業であると今大会を通してあらためて痛感させられた。 試合もチームもそれはまるで生き物のようである。あたかも感情を持ち合わせているかのごとく、わずかな気のゆるみ心の揺れから思いもしない方向へエネルギーを蓄積させながら雪崩をうって動き出す。良くも悪くもそうなるともう誰も止められない。細心の注意を払いながら試合を進めさせているにもかかわらず、監督の力量不足のせいでいまだに改善ができない。
 コーチングとは、わかってきたと思えばまた迷路に迷い込む奥深いものだ。人は失敗を繰り返しながら成長する生き物。まだまだ努力不足と素直に認め、人間力を高め指導者としてさらなる高みを目指し精進したい。監督が信頼してもらえなければ決して生徒は力を発揮してくれないことをよく知っているから。
 今回、選手たちは苦しみながらも粘り強く戦い、倉工は5年ぶり8回目の全国選抜(愛知大会)出場を決めた。自身通算18回目となる一足早いクリスマスプレゼントをいただいた。今回の第50回記念愛知大会は奇しくも第10回大会で私が優勝した思い出の地でもある。40年の時を隔てて会場となる「スカイホール豊田」。そこでどんなドラマが生まれどんな景色が私たちを待っているのか? 選手共々今から早春が楽しみである。
 最後に至らぬ無能な監督を陰で支えてくださる久本先生、保護者の方々の献身的なご協力があってこそ勝ち得た春の選抜代表であることを忘れてはなるまい。
 倉工卓球部のモットーである「さわやかに戦い、さわやかに勝つ」を胸に刻み躍動しよういざ憧れのステージへ!

倉敷工業高校 卓球部顧問